2008/05/06

建築と文化財都市


レプリカ             

実物です


サン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会の天井画のある部屋は図書館の閲覧室へ

ノアの箱船 サン・サヴァンの天井画

 遠い遠い昔、私の学部時代に越宏一先生の西洋美術史演習を受講したとき、先生はパリにいったら第一に歴史的モニュメント美術館に行くと言っていました。例えばロマネスク教会の天井画など、現地でみるより、こちらで見る方が間近で、勉強になるからだというのがその理由でした。とはいえ、この美術館にあるものは、殆ど偽物、精巧に出来たコピーです。それが、バルセロナにある、カタルーニャ美術館のロマネスク壁画と違うところです。バルセロナの場合、フレスコ画をストラッポした(はがした)オリジナルが美術館にあり、教会にはコピーがあるといった状態になるからです。
 また、これと似たような展示を、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館でも見ることが出来ます。それは、キャスト・コート(The Cast Courts)で、ローマのトラヤヌス帝の円柱が、二分されながら展示されている様は圧巻です。しかし、ロンドンのそれは、ヨーロッパの様々な国の文化財を複製しているのに対し、パリのそれは、フランスの文化財に限られている点で異なります。
 さて、その歴史的モニュメント美術館は長らく、修復のため閉館し、新たに建築や都市計画等のセクションと統合して、新たに「建築と文化財都市」として生まれ変わりました。最近、ポンピドゥーセンターの建築やデザインのコーナーが充実しているのに、さらにより専門的な展示の場が出来たというわけです。
 そのうち、やはり私が注目したいのは、文化財の複製による美術館です。一階の入り口から美術館に入場するとすぐはロマネスク教会の彫刻の展示となっています。皆さんも西洋美術史入門等で学習したように、ロマネスク教会は、スペインのサン・チャゴ・デ・コンポステラへの巡礼路沿いに多く作られましたが、それらの教会を訪問するのはなかなか困難な場所になります。例えば、コンクなどはロートレックの故郷アルビから、車でさらに奥に進んだ山の中にあります。実際に、そこへ行って、タンパンの彫刻作品を堪能するのがベストですが、なかなかそうはいきません。しかし、パリのこの美術館に行けば、コンクだけでなく、モワサック、トゥールーズ、クリュニー等々が、次から次へと見ることが可能になります。
 また彫刻だけでなく、壁画も多く模写されており、そのなかで一番の大作は、サン=サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院付属教会の天井画と言うことができるでしょう。しかし、驚いたことに、その天井画のコーナーは、併設されている建築関係の図書館の閲覧室の天井画となっているのです。無論、入場券を見せて、サン=サヴァンの壁画が見たいといえば、中に入ってみることができますが、美術館でないので、少し勝手が違います。私は、サン=サヴァンには行ったことがないのですが、こんなに間近にこの壁画を見ることは不可能なので、ここでそれを模擬体験できるのは、貴重なことかと思います。
 最後に、この「建築と文化財都市」の建築コーナーには、先の森美術館におけるル・コルビュジエ展同様、マルセイユの集合住宅の実物大の模型が作られていました。なかなか、やるものです。この建物は、ル・コルビュジエの尺=モデュロールに忠実に従って作られていますので、是非メジャーをもって、天井高は226だとか計りながら見てみる必要があるかもしれません。

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