ポンピドゥーセンターで始まった「聖なるものの痕跡展」を見ました。この展覧会は、8月11日まで開催されているので、美々の皆さんも夏休みに見ることが出来るかもしれません。一言でいえば、すばらしい展覧会でした。是非見て欲しい展覧会といえます。良く考え、良く集め、良く展示した。そんな骨太な展覧会で、さっと通り過ぎるようには行かない展示です。
展示は19世紀末以来の西洋文化における、聖なるものがどのように表現され、変容して行ったかを考えるもので、一応時代の流れにそって展示されます。展示はゴヤの版画(=横たわる死者が指し示す紙には「無」としか書かれていない)とブルース・ナウマンのネオン管作品(真の芸術家は神秘的真理をあらわにして、世界を助ける)のイントロダクションから始まり、24のセクションに別れ展示されます。各セクションは、以下の通りです。
1:逃げ去る神々の痕跡
2:無限のノスタルジー
3:偉大な新参者
4:可視性を超えて
5:絶対なるもの
6:コスモス的顕示
7:未来へ向かって
8:新しい人間
9:エデン
10:終末論
11:黙示録1
12:聖なる舞踏
13:霊感的異教徒
14:エロスとタナトス
15:攻撃
16:黙示録2
17:人間は人間にとっての狼である
18:聖なる芸術
19:夜にもかかわらず
20:アルカイックの共鳴
21:知覚の扉
22:犠牲
23:東洋の知恵
24:神の影
展示は、一応ドイツロマン主義から現代美術までの聖なるものの表現の歴史を追っているのですが、各セクションには、それに対応するような現代美術作品も展示されています。例えば、逃げ去る神々のj痕跡という第一セクションでは、フリードリヒの廃墟画やムンクによるニーチェ(当然「神は死んだ」を意味します)の絵画と一緒に、イギリスの現代美術作家ダミアン・ハーストの作品「神様お許しください、私は罪を犯してしまいました」が展示されているといった具合です。
詳しいことは後日また書くことにして、最後に入り口にあったブルース・ナウマンのネオン管の文字のところがなくなった作品が展示されていました。それは、ジョナサン・モンクというアーティストによる作品「文章は移動した」(2000年)という作品で、明らかにナウマンの作品のアプロプリエーション(流用)作品です。しかし、ナウマンが皮肉めいて書いた文章「真の芸術家は神秘的真理をあらわにして、世界を助ける」が失われ、今は赤いネオン管しかないといのは、皮肉すら成立しないということでしょうか?それは、今現在の我々の視覚芸術の現実を表しているのか否か?考えることとなります。
この展覧会は、秋にはミュンヘンに巡回するようですが、カタログは455ページにも及ぶ大部なものであり、一つの展覧会にかける情熱みたいなものも感じます。
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