2008/05/10

モニュメンタ2008「リチャード・セラ プロムナード」@グラン・パレ






 1900年の万国博の際に作られた、グラン・パレ、その鉄とガラスの大ドームは長い修復期間をへて、昨年から始まった大規模な展覧会=モニュメンタの会場になっています。昨年は、ドイツのアーティスト アンセルム・キーファーが選ばれたのですが、今年はアメリカのリチャード・セラによるプロムナードというインスタレーションが始まりました。(6月15日まで)

 パリにはチュイルリー公園に現在クララ・クララというセラの作品が再設置されていますが、今回はクララ・クララのように湾曲した鉄板を横置きするのでなく、グラン・パレの巨大な空間に巨大な鉄板を5枚縦にして、交互に位置をずらし、多少傾けながら設置しました。よく見ると巨大なのですが、グラン・パレのホールも巨大なので、うまく釣り合いがとれているところが面白いです。作家は、この空間にミニマルな鉄板を散策(=プロムナードす)る姿を思い浮かべたようです。

 ところで、このグランパレは1900年の新芸術=アール・ヌーヴォーの時代の産物です。よく見ると、鉄柵や柱などが、アールヌーヴォー独特の植物紋様のような意匠となっています。セラの作品が、ミニマルで意匠が全くないのに対し、それを包み込むグラン・パレは意匠の塊なのかもしれません。すると、そのミニマルな鉄板に、アール・ヌーヴォーの鉄枠の影がおちることで、100年を超えた二つの芸術が呼応しているようで、とても美しいです。また、私にはこのミニマルな作品が、どういうわけか詩的なものに見えるのです。5枚の鉄板はそれぞれが微妙にずれながら設置されているので、散策するたびに様々な視点が成立し、そこに詩が産まれるような気がしました。

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