2008/05/19

「秋津温泉」と「ろくでなし」そして三信ビル

 ポンピドゥーセンターの吉田喜重特集も大詰め、今日は初期の「秋津温泉」(62年)とデビュー作「ろくでなし」(60年)を見る。吉田は松竹ヌーヴェルバーグと言われるように「ろくでなし」は、ゴダールの「勝手にしやがれ」のような結末で、パリでこれを見ていることが恥ずかしい感じがしないでもない。「秋津温泉」は、主演の岡田茉莉子の映画100作目にあたり、彼女自身がプロデュースした作品だという。彼女は、33年生まれだから、29才の時の話・・・今から考えると映画が本当に盛んであったのだろう。 さてこの「秋津温泉」初めて見たのですが、けなげな新子を岡田が熱演、だめな男河本周作を長門裕之が、情けなく演じています。四季折々の田舎の風景が美しく、メロドラマしています。ただ、どうして新子はこんなだめな男が好きなんだろうという、究極の真実らしさを考えると、話は終わってしまいます。 ところで、この映画の中で、東京に出た河本が勤めている会社のシーンが映し出されるのですが、そこはなんと 昨年取り壊されてしまった日比谷の三信ビルです。そして、なんと河本の背後には、最後までテナントとしてがんばった喫茶店「ニューワールドサービス」がしっかり映っています。57年も同じ場所で営業していたのですから、当然といえば当然かもしれませんが、最後に見た姿と殆ど同じで、私は思わず声をあげそうになりました。すばらしい!でも、よくよく考えてみれば、このパリには、そういう場所がたくさんあるのです。どうして、三信ビルを保存することが出来ない日本なのか・・・そんな思いが強まるばかりです。
 あちなみに、ニューワールドサービスの全容は、猫が好きさんのページにあり、そのマニアぶりにただただ、脱帽するばかりです。

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