2008/10/10

アルミード 第3~5幕@シャンゼリゼ劇場

アルミードの後半です。 ネタバレ注意
第3幕
本来であれば砂漠のシーンであるが、第一幕同様王の寝室のセット、バラスターの前には赤い服が脱ぎ捨てられており、ベッドにはルノーが寝ている。側にアルミードが立ち、ルノーを愛してしまったことを嘆く、それを侍女のシドニーとフェニースが心配する。そして、アルミードはベッドから出て、憎悪の女神に助けを求めるために呼びかけの歌を歌う。すると、暗転しベッドにスポットがあたり、ルノーのすぐそばに、憎悪の女神が、アルミードと同様の赤いドレスを着て登場。ちなみに、憎悪の女神は、バリトンのローラン・ナウリが歌っているので、あの禿頭に赤いドレスは、ドラァグ・クイーンの様でもある。手下の女神たちも、同様に赤いドレスを着て舞台に登場し、バラスターの前に出てきて、アルミードを取り囲む、その間憎悪の女神は、口紅を取り出して、唇にそれを引くのだが、口紅のメタリックな筒が、ライトに照らされ、舞台に反射する。しかし、アルミードはそれに耐えきれずに、バラスターを乗り越え、ベッドのルノーの方に歩み寄り、憎悪の女神への願いを取り下げることになる。それに憎悪の女神は激怒して、アルミードに近づき、ビズをするようにアルミードの、首元に先ほど引いた口紅をこすりつけるようにする。同様に、手下の女神たちも、憎悪の女神の後に続き、次々にアルミードの首元に紅をこすりつけ、それらが退場したのち、アルミードは首元が真っ赤になりながら、呆然と立ちすくんで幕となる。
第四幕
ルノーを救済するための騎士のユバルドとデンマークの騎士は、サーチライトを持ちながら、劇場のバルコンに突然登場する。彼らは、客席を照らしながら、ルノーをさがし、更にはパルテールにおりて、オケピの指揮者の後ろを通り過ぎながら、舞台へ登る。舞台は前方に紗幕がさがり、後方には紗幕で囲まれているベッドがある。すると奥のベッドにヌードの女性がたち、二人を誘惑しはじめる。それは、デンマークの騎士が恋するリュサンドであり、デンマークの騎士は舞台手前の紗幕を難なくくぐり抜け、奥のヌードのリュサンドと抱擁することになる。それを、ユバルトは悪魔の仕業であることを理解して、デンマークの騎士を助けようと中に入ろうとするが、なかなか紗幕をくぐることができない。やっと中にはいったユバルドは、サーチライトを幻影としてのリュサンドに照らすと、舞台は暗転してリュサンドは消え去り、これがまやかしであることに気づくことになる。
次に、ユバルドが愛するメリースが、先ほどと同じようにヌード姿で登場し、今度はユバルドがだまされて、難なく紗幕をくぐり抜け、彼女に近づき抱擁する。舞台上のヌードのリュサンドとメリースは、当然黙役で、袖で3役の歌手たちが歌うことになる。デンマークの騎士がやっとのことで、紗幕をくぐり抜け、先ほどと同様に、サーチライトでメリースを照らすと、暗転してヌードのメリースは消え去り、誘惑に打ち勝つことになる。本来であれば、この箇所は金の杖が救済の道具となるのだが、カーセンはそれをサーチライトに置き換える演出をした。
第五幕
幕が上がると、バラスターの前方にベッドが置かれ、オレンジの光で舞台は満たされる。そして、ベッドでアルミードとルノーは抱擁し、耽溺している。アルミードはこの愛が魔術による虚偽のものであることを良く理解していて、嘆き悲しむことになる。そして、アルミードは地獄に出かけ、パッサカリアのシーンとなる。
このシーンでは、グレーの衣装の精霊たちが登場し、中央のベッドをくるくると回転させると共に、後方にあったバラスターは半分に分割され、ベッドを挟みこむように左右に配置される。このシーンの振り付けを見ていると、なにやら盆踊りのような手振りなので、笑ってしまった。もしかして、静岡の仕事で振付家は盆踊りに触れて、それを利用しているのではと勘ぐってしまう。この間、ルノーはベッド後方に行き、アルミードと同じ赤い衣装に着替えることになる。
そして、パッサカリアが終わると、ルノーは舞台前方に行き、舞台中央に置かれた椅子に、観客に背を向けて座り精霊たちをみることになる。このとき依然として舞台はオレンジの光に満たされているのだが、そこへ今度はグレーの衣装のアルミードが登場し、ルノーに行かないでくださいと懇願することになる。しかし、ルノーはユバルドとデンマークの騎士と共に、舞台から立ち去ることになるのだが、騎士から床に落ちていた赤い手袋を拾ってもらい、それをしっかりと身につけて、赤い衣装を完成させながらの退場となる。
一人残されたアルミードは、全てが終わったこと、一人残されたことの悲哀を歌い、ベッドの中でナイフをもち、それを腹に刺して息途絶えることになる。舞台は暗転し、ラストシーンとなるが、ベッドにはアルミードはいない、プロローグで王のベッドで一人まどろんでいた、男性観光客がそこにいる。ヴェルサイユ宮殿の庭園で踊っていたダンサー=観光客たちが、彼を捜し、ベッドで寝ている彼を発見すると共に、監視員も彼をみつけて、ベッドから連れ出して、混乱のうちに幕となる。すると、アルミードの話は、王のベッドで寝ていた観光客の夢の話だったのだろうか?
以下キャストです。
William Christie, direction musicale
Robert Carsen, mise en scène
Jean-Claude Gallotta, chorégraphie
Gideon Davey, décors et costumes
Robert Carsen et Peter Van Praet, lumières
Choeur et Orchestre Les Arts Florissants

Claire Debono, La Gloire, Phénice, Lucinde
Isabelle Druet, La Sagesse, Sidonie, Mélisse

Stéphanie d’Oustrac, Armide
Nathan Berg, Hidraot
Paul Agnew, Renaud
Marc Mauillon, Ubalde,
Aronte Marc Callahan, Artémidore 
Andrew Tortise, Le Chevalier Danois
Laurent Naouri, La Haine
Anders J. Dahlin, Un amant fortuné
初日ということもあり、クリスティーや歌手たちに対する熱烈な拍手でした。私は、アルミードを歌った、ステファニー・ドゥストラックがドラマティコさに欠けるのがミスキャストのような気がしたが、それでもこの大役をこなしていて合格かなと ルノーのアグニーは、相変わらずの美声で良いのですが、第二幕のまどろみのシーンで全く聞こえないところがあり、あれ?と思うところがありました。あと、3役のClaire DebonoとIsabelle Druetが良かった。
最後に演出、あるいは振り付けに対しては、ものすごいブーイングでした。僕は、楽しく見ましたけど、どうなんでしょう?

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