2008/10/09

リュリ「アルミード」第1幕~2幕




「ネタバレ注意」

第一幕

合唱が退場し、第一幕のリトルネッロが始まる。紗の幕もあがり、舞台はヴェルサイユ宮殿の王の寝室そのものであることが理解できる。しかし、ヴェルサイユが金色であるのに対し、舞台はグレー(あるいは銀色)、また舞台の床は御影石みたいにピカピカ光り反射している。更には、舞台のベッドの奥の壁は鏡のように反射していて、プロローグの映像に出てきた「鏡の間」を意識させる。アルミードは中央のベッドに赤いドレスを着て横たわっている。この赤とグレーとの対比は、演出上の肝となる。

最初に侍女のフェニースとシドニーが登場する(プロローグの栄光と英知の女神と同役、さらには第4幕のリュサンド、メリースも同様で三役となている)二人は、部屋と同じグレーの衣装を着ている。アルミードが、ルノーの足下に倒される夢で心が乱れていることを二人に告白したのち、叔父のイドラオが登場する。イドラオも同様にグレーの衣装をきていて、アルミードに結婚を勧めるが、アルミードはそれを断り、ルノーに打ち勝ったものこそが自分の夫であるとする。そして、アルミードの美しさと強さをたたえるディヴェルティスマンへと続くが、グレーの衣装を着たダンサーたちが登場し、バラスター前の広場を行進したのち、二つのグループに分かれ輪舞となる。振り付けは、日本にもゆかりのあるジャン=クロード・ガロッタで、いわゆるバロックダンスを取り入れる訳ではない彼流のヌーヴェルダンスなのだが、が率いるグルノーブルのダンサー達がレザールフロリサンの合唱と混じりあう舞台となる。ただし、広間を一度一周してから、それが二つに分かれる様子は、バロックダンスの舞踏譜のシンメトリーを想起させるので、それを意識しているのかもしれない。また、このダンスシーンは、グレーのダンサーの中で、唯一赤いドレスのアルミードがいることとなっており、その色の対比によって、アルミードの美が強調される形になっている。さらには、セットの背後は鏡のような効果があり、プロローグの鏡の間を連想させることになる。次に、曲調が変わり、アロントが登場し、ルノーによって捕虜が解放されてしまったことを報告する。それに激怒するアルミードとイドオラは、合唱と共にルノーへの復讐を誓い幕となる。

第二幕

幕があがると、ベッドとバラスターはなくなり、背後も鏡の効果はなくなっている。ただ、下から蛍光灯がひかっている。そこにTシャツに茶のジャケットのアルテミード、グレーのカジュアルなジャケット姿のルノーが登場する。アルテミードはルノーにお供したいと願い出るが、それをルノーは断る。アルテミードはルノーにアルミードに用心するよう忠告する。突然前奏曲が始まると、暗転してアルミードとイドラオが登場するが、このシーンは色彩的には赤と黒の対比となる。また、紗幕の背後にスポットライトがあがり、そこにグレーの衣装の精霊や悪魔たちが浮かびあがる。そして、彼らはグレーの服を脱ぎ捨て、アルミードと同様の赤いドレスに着替えることになる。そして、アルミードとイドラオのデュエットのあと、フルートの牧歌的な音色が響き、ルノーが登場する。舞台は、オレンジ色の光に満たされ、そこでルノーは、床に座り込み靴下を脱ぎ捨て、まどろむことになる。すると、先ほどの赤いドレスに着替えた、精霊たちが、赤いバラの花を舞台にまき散らしながら登場し、ルノーを取り囲むことになる。そして、ついに=Enfin あの有名なレシタティフ つまりは、ルソーとラモーの論争を導くレシタティフとなる。

このEnfin! il est en ma puissanceの場面は、オレンジ色の光に満たされた舞台は、サイド暗転し、奥の紗幕の背後に赤いドレスを着たアルミードにスポットライトをあてることから始まる。床に寝ているルノーであったが、床がせり上がりベッドのようになり、そこにナイフをもったアルミードが近づく。そして、苦悩しながら、逡巡するのであるが、音楽的というか、レシタティフの間が長いように感じた。これはヘレヴェッヘ盤との対比においてとなるのだろうが、モデルとすべき悲劇の朗詠からも逸脱し、近代的なドラマとなっていた。アルミードはナイフを捨てて、ベッドのルノーの横に添い寝をする、しかし、また立ち上がり そこから離れ、床にうつぶせ、先ほど蒔かれた赤いバラの花を蹴散らして苦悩のうちに幕となる。

これから出かけるので後半は帰宅後書くことします。
ところで、このアルミードですが、ジャン・リュック・ゴダールがオムニバス映画「アリア」の中で取り上げているところでもあります。


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